
ボラボラ島・最強の理由:その② 稀少性の高いハイグレードホテルの存在。
浅いラグーンに建つ一戸建てのバンガロー(小屋)のある景色を見たことがありますか? タヒチでは『水上バンガロー Overwater Bungalow』と呼ばれています。この海の上にあるナチュラルテイストのホテル客室はタヒチが発祥の地です。
1967年に3人のアメリカ人がライアテア島という場所に、初めてホテルの客室としてこの「水上バンガロー」を建設しました。しかし実際にはそれよりずっと以前、タヒチの人々がフアヒネという島の波穏やかなラグーンの上に、椰子の葉葺きのナチュラルハウス(オーガニック素材だけでできた小屋)を建設していました。「海の上の部屋」は、いわば古代タヒチアンの遺伝子が現代に具現化されたようなもの。アメリカ人達は、この「海の上の快適な部屋」というコンセプトから、『タヒチらしい海の上のホテル』という着想を得たのではないでしょうか? いずれにしてもこの『海の上の部屋』は素晴らしいコンセプトでした。

水上バンガローが世界に知られ始めた頃のボラボラ島には、水上バンガローのあるホテルが3つありました(【ソフィテル・マララ Sofitel Marara】【ホテル・ボラボラ Hotel Bora Bora】【ホテル・モアナビーチ Hotel Moana Beach】)。特に「ホテル・ボラボラ」はその後客室数の少ない高級リゾートの火付け役となったアマンリゾーツ Aman Resorts のラインナップにも加わり、タヒチの水上バンガローを世界的に有名にする事になります。またこの頃から、タヒチに限らず「高級な客室のある特別なホテルに滞在する」という、新しい旅のスタイルも定着してきました。

1980年代、ボラボラ島にある3つのホテルの水上バンガローを全部合わせても50部屋に満たないという希少性の高さでした。世界中の珍しい物好きの旅行者がこぞってボラボラ島の水上バンガローを目指したので、この頃からボラボラ島の水上バンガローは品薄状態。ホテルは客室をほぼ定価(割引なし)で販売できるという状況でした。「ホテル・ボラボラ」に関してはその当時から富裕層の顧客が多く、「チェックアウト時に次回の宿泊の予約を入れていく」という方も多かったようです。

「水上バンガロー」は当時からスーパーフォトジェニックなキラーコンテンツで、世界中のメディアがこぞって掲載していくことになり、「海の上の部屋」は瞬く間にタヒチのホテルの代名詞になってゆきます。
とは言え、浅い海の上に自然素材を基本にしたラグジュアリー・ホテルの客室を造ることは容易ではありません。快適で近代的なサービスが提供可能なホテルを大自然の中に造るコストも莫大です。当然、客室代金も高くなり、結果ボラボラの水上バンガローは『高額だけど究極の体験ができる』という一種独特のステータスとポジションを得る事になりました。
この『稀少、高額、でも最高。』という3つのフィードバックが「度肝を抜く写真」と共に世界中を駆け巡り、【ボラボラ島の水上バンガロー】をリゾート滞在の鉄板コンテンツとしたのです。

それでは、現在の水上バンガローを巡る環境はどうなっているのでしょう?
フランス領であるタヒチは、当然フランスの法律に則って自治体が運営されています。タヒチは「外交と軍事を除く多くの部分で自治を任されている」のでタヒチだけに適用される法律もありますが、双方の国家運営の考え方には近いものがあるのは当然です。タヒチでは、環境問題に関しても先進国と同様の未来志向があり、SDGs が叫ばれるずっと以前からホテルの建設や運営に厳しい法律が適用されています。それは自然環境の保護であったり、労働者に関わるものだったりして、タヒチではいくらお金で解決しようとしてもおいそれと簡単にホテル建設や運営はできません。
よってタヒチのホテル客室数は他国のリゾートと比べて少ない状態となっています。簡単にはホテルの建設許可が下りない事に加え、先進国並みの物価の高さ、環境基準の厳しさによって参入するホテル数が伸び悩んでいるからです(逆に言えばコントロールされている)。特に人気のあるボラボラでも、新規ホテルの建設プロジェクトはありません(改装中を除く)。2022年6月現在、海外旅行客がよく利用するリゾートホテルの客室数はタヒチ全体で1815部屋、ボラボラ島には618部屋しかありません。タヒチ全体でも、1日に4000人弱(カップルの場合)の方達しか泊まれないのです!

「部屋数が少なく、予約が取りづらい」というのは、旅行者にとっては余り好ましいことではありませんね。しかし、そのような環境だからこそ味わえることもあります。
タヒチのホテルに滞在して気づくことは、ホテルの敷地内が「非常に静かである」ことです(ホテルのどこにいても)。これは、元々部屋数が少なく「宿泊できる人数が少ない」ことに加え、素晴らしい客室なので「宿泊客が余り部屋から出てこない」からです。ホテルの「敷地が広い」事ももうひとつの理由で、ホテルの敷地内を歩いていても余り他のお客様と会うことがありません。
また、その他の南国リゾートによくあるような、プールサイドのビーチバーでロックやレゲエが大きな音で流れることもありません。タヒチは静寂が支配する大人のリゾートなのです。ホテルで聞こえる最も大きな音は、貿易風が奏でる椰子の葉のサラサラと擦れ合う音です。
明るい南国の陽射しの元、まるで時間がとまったような静けさだけがそこにあります。こんな場所に『ただ大切な人とそこにいるだけで、本当に幸せな気分』になれますよ!









