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タヒチ旅行は何故高額なのか?
© Tahiti Tourisme

タヒチに行く旅行パッケージは、一般的に人気のある地域「グアム」「ハワイ」「アメリカ本土」のみならず、同じ南太平洋にある「ニューカレドニア」や「フィジー」へ行く海外旅行商品と比較しても、旅行代金がかなり高いイメージがありませんか? 例えば「ハワイ」に行くツアーであれば、時には1人10万円を切るような商品もありますが、タヒチ旅行のイメージは「1人50万円から」といった感じになります。何故でしょうか? そこにはタヒチならではと言える理由がいくつかあります。

ラグジュアリーなホテル:

タヒチを有名にした宿泊カテゴリー(客室タイプ)に『水上バンガロー』という種類のお部屋があります。美しく浅く、波のないラグーンの上に建てられた、タヒチ発祥の戸建てタイプのホテル客室です。タヒチには様々な宿泊施設や客室タイプがありますが、その特異性からこの「水上バンガロー」のお部屋の宿泊に人気があります。タヒチのホテルは自然環境の保護に配慮した設計となっており、ひとつのホテルを建設するのにも様々な行政上の制限があります。これによって、美しいラグーン上に建設されるホテルのほとんどが100部屋程度のキャパシティーしかありません。しかもその部屋のすべてが「水上バンガロー」という訳ではないのです。その希少性から「水上バンガロー」の客室は世界の高級リゾートと比較しても高めの料金設定となっています。

希少性に加えて、離島故の建築資材費、フランス領故の高い人件費等の要因が複合的に重なり、運営コストは更に高くなります。日本のお客様に人気のお部屋は1部屋1泊定価で10万円〜20万円程。例えば、1泊15万円の部屋に2人で4日間滞在すると、お部屋代だけで60万円。食事やアクティビティ、国際線・国内線の航空代金他を含めると2人で合計100万円位の旅行代金になってしまいます(1人あたり約50万円)。

© St. Regis Bora Bora Resort

少ない客室数:

タヒチで最も人気のある島は『ボラボラ島 Bora Bora』です。ボラボラ島の場合、前述の「水上バンガロー」以外のお部屋も一軒家のようなバンガロー/コテージタイプのラグジュアリーな客室がほとんどです。陸上にあるバンガロータイプの客室料金は水上バンガローより若干安い場合がありますが、それでも1泊1部屋最低10万円程度はかかります。そのボラボラ島で、日本人の方に人気のホテルは7軒程。そのすべてのホテルの客室数を合わせても600部屋程度しかありません。ハイシーズンには連日満室になるホテルがほとんどですので、混み具合によって販売価格が上下する客室はハイシーズン(ピークは8月)を中心に高値が維持されることになります。

限られた国際線の選択肢:

2022年現在、日本からタヒチへ行く直行便はタヒチの航空会社「エア タヒチ ヌイ」1社のみで、複数の航空会社が就航しているモルディブなどと比較すると航空代金は若干高めになります。日本とタヒチは距離的にはかなり離れている(9,500km)ので、アジアやハワイ等と比較して国際航空券コストが高くなるのは致し方ありません。

旅行会社の事情:

もうひとつ、タヒチ旅行が高額に見えてしまう理由があります。一般的に、海外旅行に行く際には自分にとって魅力的と感じるパッケージ・ツアーを信頼出来る旅行会社から購入される方が多いと思います。中でも大手旅行会社の造成するパッケージ・ツアーは印刷された無料のパンフレット上で紹介され、この内容をお客様が比較検討した上で購入する事になります。お住まい、あるいはお勤め先近隣にある旅行代理店の店舗を訪れると、国内・海外のツアーパンフレットが壁面一杯に陳列されていますよね? 世界中の様々な旅が紹介されていますが、店舗の壁面には物理的な限界があります。紙のパンフレット一冊のページ数も限られていますし、印刷コストも馬鹿になりません(紙のパンフレットは基本無料で提供されている)。

このような状況から、旅行会社のパンフレットの掲載ページには「旅行商品掲載数の限界」があるという事になります。当然、「余り売れない商品」は極力掲載せず、売上に貢献する「売れ筋商品」が選ばれて掲載されることになります。タヒチ旅行はハネムーンで訪れる方も多いので、商品も比較的高額なものが売れます。旅行会社は今までの販売記録からデータを検討し、売れる可能性の高い商品に優先順位をつけて提案していくというケースが見受けられます。前述の通り、パンフレットの掲載スペースには限界があるので、「料金の安い商品は掲載されない=消費者の目に届かない」という状態ができあがっていきます。

しかし最近は海外旅行商品もインターネット上で紹介されるケースが増えてきて、消費者は目的の商品をネット検索して見つけることが多くなってきました。特に若い世代の方は旅行代理店の店舗に足を運ぶことは少なくなっています。インターネットで紹介される旅行商品は、利用する航空会社、ホテル、食事等の内容の組み合わせで表示できる為、そのパターンの多さは紙のパンフレットとは比較になりません。低価格重視のタヒチ旅行もネット上で容易に探せるようになってきています。それでも一般的に多く紹介されているタヒチ旅行商品は高額なものが中心になっています。

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Photo by Artem Beliaikin on Pexels.com

ホテルの運営コスト:

タヒチの正式名称は「フランス領ポリネシア」で国としてはフランスに属し、タヒチの住民はフランスのパスポートを持っています。フランス領になる前から存在する独特のポリネシア文化は引き継がれていますが、社会保障制度やインフラ、近代に輸入された文化は大きくフランス流に傾いています。特に労働者を守る制度はしっかりしていて労働組合も強く、労働条件も先進国並みに整っています。アジア諸国のリゾートではまだまだ人件費が安く抑えられていますが、タヒチの人件費は先進国並みあるいはそれ以上に高いのです。

建築費も多くの資材が輸入される上「水上バンガロー」は高度な建築技術と凝った内外装が必要とされるので建設コストは高額となります(一説には1棟 =1億円とも2億円とも言われています)。豊かな自然環境の中に建設されるラグジュアリーな建物は施設維持のメインテナンスに係るコストも大きなものになります。環境保護やサステイナビリティに考慮し、周辺の自然環境維持に関わるコストもかかります。タヒチでのホテル滞在は、類い希な美しい自然の中にも関わらず、安心で快適な先端サービスを受けられるという「非常に贅沢なもの=高額」であるという事になります。

日本並みの治安の良さ:

ここまで「タヒチ旅行がどうして高額になるのか」について説明してきましたが、旅行代金が高額になる事は悪いことばかりではありません。一般的に「タヒチ旅行が高い」と言っても、これは「旅行代金が安いアジアの渡航地と比較して高い」という事だと思います。先進国である欧州や米国のリゾートに行けば、タヒチと同じように高額な旅行になります。物価が高いタヒチですが、その分生活水準も先進国並みです。アジアやカリブ海のリゾートに行くと、旅行者とローカルの生活水準の違いは明白です。ローカルの人々は旅行者の所持金をあてにして「これでもか」という位にサービスの提供や「押し売り」に近いセールスをしてくる場合がありますよね…。

しかし、タヒチではこの手の観光客向けセールスや“ボッタクリ”に近いような営業活動は全くありません。拍子抜けするくらいに…。アジアの旅行地では当たり前の“価格交渉"や“値引き”も皆無。日曜日にショッピングやお土産を探しに行きたくても、開いている店はほとんどありません。タヒチの物価は確かに他のリゾートと比べたら高いかも知れませんが、世界でも稀な『日本以上に安全』な旅行地であると覚えておいて下さい。

本当に美しい『夢の島々』へ:

英語圏の人達がタヒチを形容する時によく使う言葉で『オーセンティック Authentic(本格的・本物)』という表現があります。タヒチは西洋の人々にとって、18世紀に初めてその存在が確認されてから今日まで、地球上に本当に存在する『楽園』なのです。その当時世界のどこかにある『ワンダーランド』を探す旅を続けた人々が辿り着いたタヒチは、気候は年間を通して温暖で、水や食べ物に加え果物は豊富、奇跡のように美しい景色に、美しく優しい女性と逞しい男性が住み、お金がなくても何不自由なく人生を楽しく生きていける、まさに『本物の楽園』でした。

それは21世紀の今でも全く変わりなく、タヒチを旅する人すべてが体験できる『白日夢』のような日々です。私の知る限り、そんな場所は世界にふたつと存在しません。選ばれた人しか体験できない希少性の高い特別な旅には、それなりのコストがかかるという事なのかも知れませんね。

brown nipa hut on body of water
Photo by Vincent Gerbouin on Pexels.com

まとめ: 

  • ホテルのクオリティーが高く、運営コストも高い。
  • ホテル運営において自然環境を配慮している為、ホテル数や客室数が圧倒的に少ない。
  • 比較的低価格のタヒチ旅行商品は目にする機会が少ない。
  • タヒチは先進国並みの生活レベル、しかも大陸から離れていて物価が高い。
  • 物価は高いが、その分治安レベルは先進国並み以上に良い。
  • 本物の『楽園』に行く旅は、多少コストが高くても仕方ないのではないでしょうか…。
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